ガスエアコンとは、電気式の一般的なエアコンと同様のヒートポンプの原理などをつかってプロパンガスや都市ガスで動くエアコンです。
昔は一般家庭でも多く利用されていたガスエアコンですが、現在は業務用のものしか生産されていません。
今回はガスエアコンの特徴や、ガスエアコンが壊れた時はどうしたらいいか紹介させていただきます。
今回のポイント 1.ガスエアコンとはプロパンガスや都市ガスで稼働するエアコン 2.ガスエアコンの原理にはヒートポンプ式と吸熱式の二種類がある 3.一般家庭向けのガスエアコンの生産は終了している |
ガスエアコンはプロパンガスや都市ガスなどを利用して稼働するエアコンのことです。
ガス冷暖房の方式には、大きく分けると建物の規模などによって、主に中規模以下の建物に用いられる「個別分散方式」と大規模な建物に用いられる「セントラル方式」があります。
冷暖房システムは、電気とガスのいずれであっても建物などの規模で、個別分散方式とセントラル方式に分かれます。教室やフロアごとのエリアに分けて冷暖房を設置する場合は、GHPがお薦めです。また、施設全体の冷暖房を1台で行いたい場合はナチュラルチラー(吸収空調システム)が適しています。
一般社団法人 日本ガス協会 ガス空調概要・特長より引用
また、冷却方法の違いにより以下の2通りに分類することが出来ます。
・ガスヒートポンプ(GHP)
ガスエンジンでコンプレッサーを駆動し、室内のエアコンに冷暖房を供給するシステム。
・ガス吸収式空調システム
天然ガスを熱源として吸収式冷温水発生機を動作させ、冷温水を発生させる。
ガスエアコンのメリットは以下の3つです。
ガスエアコンは、電気ヒートポンプ等の電気式のエアコンと比較するとガスで稼働するため圧倒的に消費電力が少なくなります。
そのため、ピーク電力を削減し最大デマンド値を下げることで、年間の電気料金を節約することに繋げることが可能です。
(※高圧受電の法人や、スマート契約などの実量制を設定している世帯の場合)
例えば、GHPの場合、消費電力量はEHP(電気式ヒートポンプ)の1/10。発電機能付きGHPであれば約1/100まで低減することができます。
プロパンガスではなく都市ガスを利用するガスエアコンの場合なら、環境負荷を抑えることに繋がります。
都市ガスは燃焼時のCO₂排出量が最も少ない化石燃料で、大気汚染の原因となるNOx(窒素酸化物)の発生も少なく、SOx(硫黄酸化物)の排出量はありません。
電源自立型のGHPは、電力供給なしで空調運転を開始し、発電した電力を照明や通信機器などに供給可能です。
ナチュラルチラー(吸収空調システム)でもコージェネレーションと組み合わせて導入することにより、排熱利用による省エネと停電時の空調利用を実現するシステムを構築することができます。
ガスエンジンヒートポンプ(GHP)は、電気の代わりにガスで稼働する仕組みになっています。
冷房時は冷媒の気化により室内から熱を吸収し、室外機で冷媒の液化により室内から吸収した熱を放出します。
暖房時は冷媒の気化により外気から熱を吸収し、室内では冷媒の液化により発生した熱を放出します。
長野都市ガス ガス空調のメリットより引用
ガスエンジンヒートポンプ(GHP)と電気式ヒートポンプ(EHP)の違いは、冷媒を圧縮するコンプレッサを駆動する機械や使用するエネルギーが異なります。
冷媒を圧縮するために、コンプレッサを使用します。
GHPとEHP(従来の電気式ヒートポンプ)は、冷媒を圧縮するコンプレッサを駆動する機械が違うだけです。
ヤンマー GHP(ガス空調) GHPについて より引用
GHPのメリットは以下の4つです。
霜取り運転が極めて少なく、暖房特性に優れています。また、暖房を中断する冷風感がなく連続暖房運転ができます。
運転音も静かな特徴があります。
EHPを利用しない場合、受変電設備(キュービクル)設備工事を軽減できるため、大幅にコスト低減と省スペースを実現できます。
都市ガスの場合は、経済的なガスを使用するのでランニングコストを低減できます。
電気エアコンに比べ、消費電力は約10分の1になります。
更に、電力消費量が少ないため、デマンドを抑制することもできます。
エアコンの心臓部ともいえるコンプレッサーをガスエンジンで駆動することにより、数々のメリットを生み出します。
EHPに比べて46%削減(地域:東京)
ガス吸収式空調システムは、液体が気化する時に周囲の熱を奪い、液化する時には熱を放出するという性質を利用して冷房などを行なう空調システムです。
冷媒に水を使用してノンフロンで運転するため環境保全性が高く、ピークカットによる電力負荷平準化などのメリットともあわせて、都市空調の主流となっています。
吸収式冷温水機は、水の気化熱を利用したもので、水の蒸発、吸収・再生・凝縮を繰り返すことで冷房をおこないます。
気化した水の吸収液には臭化リチウムを使用しており、オゾン層破壊物質であるフロンをまったく使わない環境にやさしい空調システムです。
また都市ガスは、水を吸収した臭化リチウムを過熱し再生する過程に用いられています。
ガス吸収式空調システムのメリットは以下の5つです。
水を冷媒にしているため、オゾン層破壊物質であるフロンを一切使用しないという特徴があります。
夏の冷房用電力を抑え、ピーク電力量をカットすることで施設の電力負荷平準化に貢献します。
電力需要を低減し、通年の電気コストを抑えることができます。ガス会社によっては空調用ガス料金などが適用される場合もあります。
一台で冷暖房を兼用、ユニット型の場合は屋上設置が可能なため機械室の限られたスペースを有効に活用できます。
燃料貯蔵の必要がないため資格者不要で運転できます。
家庭用のガスエンジンヒートポンプ(GHP)などのガスエアコンは2011年に完全に生産を終了しており、再販の見込みが現在もたっていない状態にあります。
家庭用でガスエアコンを新たに考える場合には業務用のモデルしか無いということになります。
「ガスシステムエアコン」をご愛用のお客さまへ 2011年9月12日 大阪ガス株式会社 ~販売終了のお知らせ~ 平素は当社商品をご愛用頂き、誠にありがとうございます。 当社は、ガスシステムエアコンにつきまして、1979年に壁掛けセパレートタイプを発売して以来、当社管内で約294,000台の販売をさせていただき、多くのお客さまにご愛用いただいて参りました。厚く御礼申し上げます。 省エネルギー性能を向上させた機器の開発と合わせて、OEMメーカーと共に本製品の販売継続のための検討を続けてまいりましたが、近年の販売台数の減少に伴い2011年3月末をもちまして、販売を終了させていただきました。なお、集合住宅向けパイプシャフト設置タイプのシステムエアコンにつきましては2013年3月末をもちまして、販売を終了させていただくことになりました。 販売終了に伴いご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。 大阪ガス 「ガスシステムエアコン」をご愛用のお客さまへより引用 |
家庭用のガスエアコンが壊れた場合は、残念ながら、通常の電気式のエアコンを利用するか、ガスファンヒーターかガス床暖房の利用を検討するしかありません。
ガスエアコンは2011年に生産終了しているものの、今でも現役で使用されている方もいることと思います。
しかし、残念ながら家庭用のガスエアコンは生産を完全に終了しており、再び製造される見込みはありません。
もしどうしても家庭用のガスエアコンを、という場合には業務用のものから選ぶ必要があります。
また、ガスエアコンの修理用のパーツである補給品供給も2020年11月をもって終了することが決まっています。
もし今後壊れた場合に修理を行うこともとても難しくなってしまいます。
エアコンを利用する場合は電気式のエアコンに取り替えることがおすすめです。
今回はガスエアコンの種類やそれぞれの特徴、メリットなどをご紹介しました。
しかし、壊れた場合に交換部品がない、ということはなかなか怖いと思います。
実際に壊れてしまう前に電気式のエアコンやガスファンヒーター、ガス床暖房などを検討されることをおすすめします。
ガス暖房設備でわからないことがあるなら、まちガスにおまかせください。
ガス会社の乗り換え検討だけでなく、ガス機器の設備の交換やメンテナンスなど、ご不安なことは何でも相談にのります。