現在ガスを利用しているなら、何か不測の事態が起きたときに迅速に対応できる仕組みを持つ集中監視システムが導入されていると安全面において安心感があります。
LPガスにおいて普及が進められている集中監視システムですが、都市ガスには集中監視システムのような保安を担う仕組みはあるのでしょうか
今回は都市ガスにおける集中監視システムについて紹介していきたいと思います。
今回のポイント 1.集中監視システムは都市ガスにも用意されている 2.導入率はまだまだ低い現状がある 3.より安全な新型も開発されている |
集中監視システムとは、各家庭のガスメータと集中監視センターを何らかの通信回線で接続して、ガス利用状況や異常を遠隔で集中的に監視するシステムです。
このシステムが導入されていると、LPガスに関する何らかの異常を感知した場合、即座に集中監視センターに通知され、状況に応じて供給ガス会社の保安機関等が出動し、適切な措置を行う等の対応を出来るようになります。
例えば、ガスホースに穴が開いてガス漏れが起きたりすると、異常を検知したコンピューターにより自動的にガスを遮断して、自動的に通報されるようになっています。
上記の様に集中監視システムは安全のために有用なシステムではありますが、集中監視システムはただガス会社と契約すれば必ず利用出来るものではありません。
このシステムを導入しているガス会社と契約する必要があり、集中監視システムと繋がっている機器を設置しなければなりません。
では、集中監視システムは現在どれくらい普及しているものなのでしょうか?
都市ガスの集中監視システム導入率は、都市ガス3社の聞き取りによると5%程度(※1)です。
これまでの集中監視システムは安全対策を中心とした機能が搭載されていました。
現在は技術の進歩によりさらに様々な機能を搭載することが出来るようになり、提供できるサービスも充実し始めています。
都市ガスは2017年4月から小売自由化が始まりましたので、競争が厳しくなることからガス事業者は質の高いサービス提供が求められています。
それに伴い、集中監視システムは様々な情報を管理する手段として有用性が認められ、導入されるようになってきました。
現在東京ガスは、契約者と会社が双方向通信によりつながることで発生する新たな価値を求めて、「スマートメーター」の技術開発を行なっており、集中監視システムの全戸導入を目指しています。
開発が進められればより安全性やサービスが充実するため、これから導入件数が増えることは予想出来ます。
※1…経済産業省「ガス集中監視システムについて」より参照
一方、LPガスの集中監視システム導入率は25%程度です。
1990年代のマイコンメーターの普及から始まり、現在まで徐々に導入率が増加しています。
また、集中監視システムの導入の促進を目的とした2016年に施行された「認定液化石油ガス販売事業者制度」により着々と増加傾向にあるようです。
認定液化石油ガス販売事業者制度は、
「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」に基づき、一般消費者等の保安を確保する手段として、集中監視システム等を導入し、LPガスの保安の高度化に特に積極的に取り組んでいると認定を受けたLPガス販売事業者を認定する制度になります。
また、管理方法や機器の設置により、「ゴールド保安認定事業者(第一号認定LPガス販売事業者)」、「保安認定事業者(第二号LPガス販売事業者)」という区分で認定されるようです。
詳しくは経済産業省HPの「認定液化石油ガス販売事業者制度」をご覧ください。
HEMSと比べて集中監視システムはサービス面において後手に回っています。
HEMSは集中監視システム同様、専用のメーターを設置する必要がありますが、ガスだけではなく電気をも管理することことが出来るシステムです。
そんな強力なライバルに負けないように、集中監視システムは新しいバージョンが開発する必要に迫られています。
新バージョンは、超低消費電力無線通信による多頻度通信への対応や国際標準化による機器の低コスト化を実現することを目的としています。
用いられる通信インターフェースは、「Uバス(複数の通信機器を並列配線することで共同利用を可能にする方式)」と「Uバス(無線端末間で多段中継通信を可能にする方式)」に統一されています。
では「集中監視システム」とは「何」を導入すれば使用できるようになるのでしょうか。
現在様々な商品が多くの企業から出ていますが、今回は有名な大手企業で採用されている商品二つをご紹介します。
「NTTテレコン株式会社」はLPガスの集中監視サービスを提供している企業の中でも最大手で、「テレコンスマートサービス24」というサービスを提供しています。
これはLPガスや都市ガスだけでなく、水道・電気の使用量・警戒情報等の通信回線を利用して提供しており、全国で350万世帯以上に使用(※1)されています。
都市ガスの場合は検針コストの削減や検診にまつわる問題を解消できるだけではなく、ガス漏れなどのトラブル時には集中監視センターからメータを遠隔制御することで迅速に対策することができます。
※1…NTTテレコン株式会社「自動検針・集中監視「テレコンスマートサービス24」」より参照
また、都市ガス大手の東京ガスも集中監視システムである「くらし見守りサービス」を提供しています(2017年2月1日より受付開始)。
このサービスはガス関連の自動通報サービスや遠隔遮断サービスだけでなく、ガス・電気の使用量を通知したり、鍵や窓の閉め忘れをスマホに通知したり、留守中のドアや窓を監視する簡易セキュリティサービスや、高齢者のご家族やお子様を帰宅などの様子をスマホに通知するサービスなどのエネルギー関係以外のサービスについても提供可能になっております。
今回は都市ガス周りの集中監視システムについて中心に紹介させていただきました。
昨今の技術の進歩によりただの監視システム提供サービスだけだったものが、様々な付加サービスを提供できるようになってきており、今後普及が進めばより便利になっていくことでしょう。
今後このような双方向で連携出来るサービスというものは、従来の安全管理という目的以上に、HEMSに見られるような新たなエネルギーソリューションの一環としての集中監視システムに注目が集まると考えられます。