LPガスの事故について前回お話させていただきました。
その中でLPガスの事故の分類において、「不完全燃焼による中毒」と「ガス漏洩着火」が多く占めているというお話がありました。
この「ガス漏洩着火」はLPガスの事故と聞いてすぐに思い当たるであろう火事や爆発事故の原因となります。
では「不完全燃焼による中毒」とはどういったものなのか?
今回はこの話題に触れていきたいと思います。
今日のポイント 1. COはどうやって発生するのか 2. CO中毒の危険性について知ろう 3. 事故を起こさないための対策 |
LPガス自体には毒性はありません。
しかし、ガス中毒とよばれる事故が起きています。
では、何が原因として中毒事故が起きているのか。
それは「一酸化炭素(CO)」が原因なのです。
LPガスは前提としてガス器具の正しい使用法を守っていることや、器具に破損などが無いように点検が出来ているか、といったことが事前に出来ていることが条件ですが、正常に燃焼していればとても安全なガスといえます。
通常は空気中の酸素とガスが反応して二酸化炭素と水蒸気だけが空気中に排出されています、この2つだけができる反応を完全燃焼といいます。
ガスコンロの場合は、青い炎が出ていれば完全燃焼が出来ているので問題ありません。
しかし、酸素の量が足りないといったLPガスとの反応がうまくできない状態になると、COや煤などが排出されてしまいます。
この反応を不完全燃焼といいます。
ガスコンロで温度が上がらず赤い色の炎が出ている場合は不完全燃焼を起こしています。
理科の実験で使ったガスバーナーを思い出してください。
空気が足りないときは安定しない赤い炎に、空気を供給してやると安定した青い炎が点いていました。
このように不完全燃焼は、酸素の供給が不十分だった時に起きます。
不完全燃焼が起きる原因には他にも、炎の燃焼温度が極端に低い場合もあります。
特に事故が起きやすいため注意してほしいのは「酸素不足になった」場合です。
また、不完全燃焼を起こすとCOが発生してしまいますが、同時に炭化水素系やアルデヒド系のガスが発生することもあります。
その際、LPガスに元々ついている硫黄系の臭いとは異なる別の臭いがする場合もあります。
これらも毒性を持っている場合があるので注意が必要です。
しかし、このCOは非常に強い毒性を持っていますが、無色・無味・無臭なので空気中に広がっても気付きにくい特徴があり、COを万が一吸い込んでしまうと、酸欠状態となり非常に危険です。
気付かないうちにCO中毒に陥ってしまっていたというケースも多くあります。
CO中毒という単語を聞いたことがあったとしても、具体的に想像がつかないかもしれません。
どんな症状の中毒なのか説明していきたいと思います。
CO中毒とは、「一酸化炭素(CO)」を含んだ空気を呼吸した時に起きる中毒です。
COは無味無臭のため気付きにくいのですが、吸い込んでしまった量が、ごくわずかな量でしかなくても中毒症状を引き起こす場合があります。
全身の細胞に酸素を運ぶ役目を持っている赤血球ですが、これは赤血球に含まれるヘモグロビンの働きによるものです。
COはこのヘモグロビンにとてもくっつきやすく、COを吸い込んでしまうと、酸素を運ぶ力が低下してしまうため血液が低酸素状態になってしまいます。
こうなると呼吸しても酸素を十分に吸収することが出来ないため、呼吸できるのに窒息しているような状態になってしまいます。
COとヘモグロビンは一度結合してしまうとなかなか回復することが出来ません。
安全な空気を吸って回復を待っていても、体の中に吸収されてしまったCO量が半分になるには4時間程度かかるともいわれています。
人体への影響としては、軽度の場合で頭痛・吐き気・めまいなどで、重度になると意識を失うことや後遺症が残る場合、最悪の場合は死に至ります。
CO中毒の症状が重くなってしまうのは、空気中のCOの濃度と吸入時間が関わってきます。
下の表は空気中に含まれるCOの濃度と中毒症状の関係をまとめたものです。
空気中の一酸化炭素濃度と中毒症状
CO濃度 | ppm | 呼吸時間および症状 |
0.02% | 200 ppm | 2~3時間以内に軽い頭痛 |
0.04% | 400 ppm | 1~2時間で前頭痛 2.5~3.5時間で後頭痛 |
0.08% | 800 ppm | 45分で頭痛、めまい、吐気 2時間で失神 |
0.16% | 1600 ppm | 20分で頭痛、めまい 2時間で致死 |
0.32% | 3200 ppm | 5~10分で頭痛、めまい 30分で致死 |
0.64% | 6400 ppm | 1~2分で頭痛、めまい 10~15分で致死 |
1.28% | 12800 ppm | 1~3分で死亡 |
※たとえ0.01%(100ppm)であっても幼児などの場合では、数時間でけいれんを起こすこともあります。
※ppmとは:「parts per million」の頭文字をとったもので、100万分の1のこと。1ppm = 0.0001% であり 10,000ppm = 1% ということ。
とても量が少ないためイメージがしにくいと思います。
例を出すとするなら0.02%の濃度というのは10立方メートルの大きさの部屋(2tトラックのコンテナに10立方メートルのものを詰め込めることが出来ます。)に2リットルのペットボトル1本分のガスを混ぜた状態です。
このように本当に少量でも症状が出てしまうぐらい毒性が強いガスなのです。
もし、給気および排気が十分ではない室内でLPガスを燃焼すると、短時間のうちに部屋の中の酸素が減少し、かわりの二酸化炭素などが排出されます。
酸素濃度が減少したら不完全燃焼の原因になってCOによる中毒になってしまうかもしれません。
それでは、CO中毒を防ぐにはどのような対策をとったら良いのでしょうか。
大きく3つの方法があります。
まず、CO中毒を防ぐ方法にあげられるものとして、「換気」があります。
LPガス(LPガス)を燃焼させるためには、大量の空気が必要なために、換気を行わないと酸素不足や排気ガスが室内に充満してしまい、不完全燃焼となって、CO中毒を起こす原因となってしまいます。
ガス式のストーブやファンヒーターなどを使う場合は、1時間に1~2回窓を開けて換気を行いましょう。
ガスによるCO中毒を防ぐ方法としては不完全燃焼防止装置付きの燃焼機器やFF式(強制給排気式)、屋外へ設置するタイプのガス釜・給湯器等の安全性の高い機器を使用することで事故を防げます。
不完全燃焼防止装置とはLPガスを使用するガス器具が不完全燃焼を起こしたときに自動的にガスを遮断して、CO中毒事故を未然に防ぐ装置の事を言います。
これは1989年になると国がメーカーに対して機器への不完全燃焼防止装置設置を義務化しました。
不完全燃焼防止装置に関する注意点として瞬間湯沸かし器、ガス給湯器、ガス風呂釜などの古い物は不完全燃焼防止装置がついていないものがあり、こういったガス器具の使用によっての事故が、毎年各地で発生しています。
古い燃焼器は不完全燃焼の発生の可能性が高く、防止装置が無い場合は非常に危険ですので、早期に交換するようにしましょう。
また、風呂釜など排気筒のあるものは、排気筒のはずれや腐食がないか、給排気口(えんとつ)がふさがれていないかなど、常に意識して注意する必要があります。
もし設備に異常があるようならばすぐに使用を中止してガス会社に連絡を取ってください。
また、CO中毒防止のため、ガス漏れ警報器の設置も行いましょう。
ガス漏れ警報器とは、漏れたプロパンや不完全燃焼で発生したCOを検知して、素早くブザーや音声で知らせる装置の事を言います。
また警報器の交換期間は5年とされていますから、期間が経過した物は、必ず交換するようにしましょう。
一度に大量のLPガスが使用される事業者や施設で事故が発生する場合は、多くの人に被害が出るケースが発生することがあります。
業務用厨房施設では不完全燃焼防止装置等の安全装置が付いていない機器が使用されている場合や、ガス器具の点検が十分ではない場合等があります。
これらの事故は換気や設備の交換をすることによって未然に防ぐことができます。
ガス器具は安全に使用さえすれば、快適な生活にかかせないものではありますが、
そのためには、CO中毒事故を防ぐための知識を備えておくことが大事です。
しっかりとした知識を身につけた上で、利用するようにしましょう。
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ぜひお気軽にご相談ください。